事例集/技術解説 - DX

Work Life Shift導入に伴う全社員の出勤状況把握の取組み 【株式会社富士通エフサス】

働き方改革取り組みの背景

富士通エフサスでは2016年より、在宅勤務制制度を導入しておりましたが、利用は一部の社員に留まっていました。

新型コロナウイルスの流行に伴い、全社員がテレワークを利用できる環境を提供することで、在宅テレワーク勤務を基本とし、2022年11月現在はオフィス勤務とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークを推奨しています。

アフターコロナを見据え当社は、より良い働き方を模索しWork Life Shiftを実践しております。

Work Life Shiftの概要

富士通グループは2020年7月より、新しい働き方としてWork Life Shiftを発表。

当社も富士通グループ企業としてこの働き方を導入してきました。

Work Life Shiftは以下の3つの要素から成り立っています。

  • Smart Working(最適な働き方の実現)

    勤務形態はテレワーク勤務を基本とし、業務内容や目的、ライフスタイルに応じて、時間や場所をフレキシブルに活用できる最適な働き方を実現する。

  • Borderless Office(オフィスのあり方の見直し)

    固定的なオフィスに縛られる従来の働き方の概念を変え、各々の業務内容に合わせ自宅、ハブオフィス、サテライトオフィス等、自由に働く場所を選択できる勤務形態を実現する。

  • Culture Change(社内カルチャーの変革)

    従業員の高い自律性と信頼に基づいたピープルマネジメントにより、チームとしての成果の最大化や生産性向上を実現。物理的に離れた場所で仕事をする働き方へと大きく変容することに対し、従業員からの声を収集し、業務状況の可視化・分析を行い、働き方の最適化を追求する。

Work Life Shiftの導入により、社員が業務内容や目的、ライフスタイルに応じて、勤務時間や場所を自由に組み合わせ、選択できる働き方が浸透。オフィスや自宅、グループ内のサテライトオフィスも利用可能となり、柔軟な働き方を選択できるようになりました。

一方で、マネジメントの観点では、いつ・どこで・誰が勤務しているのか、社員の出勤状況を把握する必要が出てきました。

出勤状況把握の課題・取り組み

課題

出勤状況を把握するために、いつ・どこで・誰が勤務しているのかを集計し可視化しなければならず、管理・集計が煩雑になっていました。

出勤状況把握の流れ
【社員】
  • 毎日、PCから共有のExcelファイルにアクセスし、出勤状況報告を行う
【管理職】
  • 毎日、社員の入力状況を確認し、入力されていない場合は入力依頼を行う
  • 入力結果を集計し、集計担当者へ報告する
【集計担当者】
  • 各本部から不統一なフォーマットで送付されてくる出勤状況を集約し可視化を行う

取り組み

当社では2021年に「DX分科会」を発足。『DX実践を、社員視点(Employee Experience)と顧客価値視点(Customer Value)の両面で取り組む』ことをスローガンに、DX化を推進する活動を行っていました。

出勤状況把握の課題に対しての解決策として、「エクセルでの数字集計を撲滅し、出勤状況の自動集計・効率化」することを目指し、DX分科会の1つの活動として取り組みました。

「現場に恩恵がない集計は現場部門の入力率を著しく悪化させる」との考えから、出勤場所の自動集計に加え、現場で特にニーズが高い、在籍や行動予定を管理するツールを考案。課題解決のために、ローコード開発プラットフォームである、PowerPlatformによる構築を決定し、以下の開発目標で活動しました。

PowerPlatformによるツール開発目標
  • 最終的なとりまとめ部門の集計負荷軽減
  • 社員が直観的に入力し易いUI、入力負荷軽減
  • PC、スマホ両方から登録・参照可能
  • グラフィカル且つ見やすい、出勤状況確認フォーム

※PowerPlatform:Microsoft が提供するローコードプラットフォーム。Office 365と親和性が高く、データの融通がしやすい。

ツールの概要

勤務場所・在籍・行動予定の入力結果を、自動集計・可視化するアプリケーション。

勤務場所・在籍・行動予定の入力を喚起するアラームメールを定期送信し、入力漏れを防止。

主な機能
  • テレワーク管理
    • 作業場所の入力・表示・集計
    • オフィス出社率などのサマリ表示
    • 入力リマインド
  • 行動予定
    • 行動予定の入力・表示
    • エフサス社内への行動予定の掲示
  • カスタマイズ
    • 各部署での表示変更
    • 独自データの追加

ツール導入効果、苦労・気づき

出勤場所の自動集計と、在籍・行動予定を参照可能なツールの構築により、出勤状況の集計と可視化もスムーズになりました。

出勤状況把握の流れ
【社員】

・毎日、スマホ・PCからツールアクセスし、出勤状況を登録する※代理入力可能

【管理職】

・作業無し

※ツールにて自動集計・報告、入力されていない社員へアラームメール送付

【集計担当者】

・作業無し

※ツールにて自動集計・可視化

ツール導入効果

ユーザーからも、以下のフィードバックが有り、概ね当初の目標通りの効果を得られたことが分かりました。

【社員】
  • 体感で10分程度報告作業に要していたが、アプリから一括入力できることで1分程度に短縮した
  • 全社員の出勤状況をアプリから一括で把握できるようになり、出勤シフト等の計画策定が円滑に進むようになった
  • 他部署との対面での会議日程調整を、参加者に確認しなくて良くなった
  • 外出が多いメンバーもモバイルから入力できるようになり、利便性が向上した
  • 誰が、いつ、どこに勤務していたかが分かり、濃厚接触者の絞込が楽になった
【管理職】
  • Power Automateにより入力督促や、出社率の集計・結果報告を自動化でき、管理負荷が軽減した
【集計担当者】
  • 毎月の膨大な集計作業から解放された

ツール開発時の苦労・気づき

ツールの開発に携わったDX分科会活動メンバーも、ローコード開発を体験することで、以下の苦労や気づきを得られました。

ツール開発時の苦労
  • 様々な職種、働き方をする社員がいる中で、誰でもマニュアルなしに直感的に利用できるような画面フローとすることに苦労した
  • 『管理のためだけのツール』とならないよう、様々な立場の人が利用するメリットを感じられるように要件を詰めることに苦労した
  • カラーチャートを利用して色認識の差に配慮した
  • 大量の件数を捌くバッチがクラウドサービスの処理上限値に抵触し、スローダウンするため、多少の処理速度を犠牲にしても上限値に抵触しないように工夫した
ツール開発による気づき
  • アプリにカスタマイズできる自由度を持たせることで、各部門が自ら工夫し、職種や働き方に合った形へ改善し利用する流れが生まれた
  • 目に見える形でアプリを作成し共有すると、それを呼び水にまた新たなアイディアが発生してDXに相乗効果が生まれた
  • 時間をかけて1から10までお膳立てするよりも、6ぐらいの必要最小限でリリースして後からフォローする方が不必要な作りこみを防ぎながら、スピードを保てた
  • コミュニティを活用することで、フォローを通じてDXの輪が生まれた
  • 過去のトラブルFAQの記録、コミュニティにナッレッジが蓄積され部門の垣根を超えたフォロー体制を構築した

まとめ

DXを進める意義は、ITツールやデジタルテクノロジーなどを活用して、まったく新しいビジネスやサービスを創出し、新たな顧客価値を提供するとともに、会社の成長を促すことであるとされています。専業の開発者ではない社員自らが業務をデジタル化できるノーコード・ローコードは、その可能性を秘めています。

一方で、気軽に短期間で構築できてしまうローコード開発だからこそ、ツールを導入することで効率化したい業務をきちんと整理しなければなりません。何故そのツールを導入するのか、どの様な効果を得たいのか、ツール開発の目的を明確にすることで、類似アプリの乱立を防ぐとともに、無駄を省いた業務の効率化が図られ、DXの促進に繋がると当社では考えています。