事例集/技術解説 - 働き方改革

テレワーク化における従業員間のコミュニケーション向上への取り組み 【株式会社富士通エフサス】

コロナ禍におけるコミュニケーションの低下

働き方改革の一環として当社では2016年から在宅勤務、2018年からテレワークを導入しました。

2020年4月には新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が出され、2020年7月から富士通の国内グループ会社社員向けに、テレワーク勤務を勤務形態の基本とすると発表がありました。

当社ではテレワーク導入時にネックとなるインフラ整備やセキュリティなどの業務環境の課題は解決していましたが、導入当時はオフィス勤務が基本形態だったため、テレワークを利用する社員は少数でした。

テレワーク勤務が進むにつれ、従業員同士で顔を合わせる機会が減少し、従業員間のコミュニケーションにも大きな変化がありました。

コミュニケーション低下による業務影響と課題

これまでのオフィス勤務が基本形態の際には、コミュニケーション面で容易に対応できていたことができなくなり、以下のような業務影響が発生していました。

必要な人と必要な情報しか会話しなくなったことで同僚への気軽な質問が難しくなると同時に、業務の担当部門へ質問が集中することで、担当部門からの回答レスポンスが低下していました。
⇒課題①:テレワークにおける担当部門への質問方式の見直し

対面では口頭で報告できていた業務状況がテレワーク環境ではチャット、ショートメッセージ、メールなど連絡方法が多様化することで、情報の散在による管理不足や、報告の読み落としによる応答の遅延が発生していました。
⇒課題②:コミュニケーション手段の集約と情報整理

業務影響と課題に対する改善策

①チャットボット導入による質問・回答方式の見直し

担当部門へ質問が集中して回答レスポンスが低下したことへの対策として、各種問合せへ自動応答するチャットボットシステムを開発・導入しました。

チャットボットの社内トライアルでは社内システムに関する問合せのみが回答範囲でしたが、トライアルを続けることで社内システム以外の問合せも多数寄せられていることが判明しました。

そのため機能改修時は社内システムに加えて総務、経理、購買など事務作業から工事ビジネス、電子契約、商談窓口など幅広い業務に回答できるよう改善をしました。

AI学習についてもチャットボットの管理部門がFAQの学習内容を読み込ませるだけでなく、利用者からの回答履歴をもとに回答予測(機械学習)する仕組みを実装し、より近い回答ができるよう改善をしました。

[図1] チャットボットの学習プロセス

まだ回答できない問合せ範囲もありましたが、よくある問合せなどはチャットボットでの対応が増えたため、担当部門はチャットボットで回答が難しい問合せのみに集中することでレスポンス遅延が減りました。

②Teamsを活用した気軽なコミュニケーション広場の形成

コミュニケーション手段の多様化と情報整理に向けて、業種/部門/プロジェクトなど役割に応じたTeams(※1)のグループを作成し、グループの共有フォルダへ資料を集約することで散在していた情報の一元管理を行いました。

Planner(※2)と連携することでTeamsのグループメンバーとタスク共有を図り、タスクの細分化や進捗状況の共有、期限設定による遅延防止など業務状況の把握が容易となりました。

Teamsのグループメンバー宛にメンション(※3)でメッセージを発信して応答を促す、他人のメッセージへ返信代わりに「いいね!」のスタンプを送るなど、既読状況が明確となることで円滑なコミュニケーションが可能となり、報告の応答遅延も改善されました。

[図2]Teamsのチャット画面
[図3]Teamsのファイル共有画面
[図4]Plannerのタスク管理画面

(※1) Teams:正式名称はMicrosoft Teams。会議、通話、チャットなどの機能を有し、Word、PowerPoint、Excel などMicrosoft社のソフトと連携が可能。

(※2) Planner:正式名称はMicrosoft Planner。タスクの整理や進捗状況の共有などの機能を有する。Teamsとも連携可能。

(※3) メンション:Teamsで特定の人物に向けてメッセージを発信する機能。

改善策の効果

①チャットボット導入による効果

  • 時間を問わず気軽に問合せが可能となり、回答時間を短縮
  • チャットボットで回答が難しい問合せには関連する連絡先が表示され、利用者は問合せ窓口を探す手間が省け、担当部門は回答が難しい問合せに注力でき、対応工数を削減
  • 関連する連絡先が表示されるため担当外の問合せが減少
  • 2022年上半期はチャットボットへ1,206件の問合せがあり、そのうち623件(51%)をシステムで対応(51%の回答はシステム対応の目標である回答率50%以上をクリア)

②Teams活用による効果

  • Teamsに資料を集約することで情報の一元管理を実現
  • 集約した資料は共同編集機能を用いて同時に修正することで、会議中の指摘など意思疎通の改善
  • Planner連携によりグループメンバーとタスクを共有・整理し、進捗状況の把握を実施
  • Teams内に作られたグループでメンションを活用したメッセージや、メッセージに「いいね!」をつけて迅速なコミュニケーションを実現

まとめ

今まではオフィスや顧客先へ出向く勤務形態が一般的でしたが、コロナ禍によりテレワーク勤務が働き方の1つとして加わりました。しかしテレワークが続くことでコミュニケーションの量と質が下がり、業務効率とエンゲージメントの低下が懸念されています。エンゲージメント改善に向けて働きやすい環境と人間関係づくりが求められています。

人との繋がりが実感できる円滑な職場環境づくりのため、目的や課題に応じて適切なコミュニケーションツールを選定し、活用を推進することが働きやすい風土づくりとそれにともなう生産性向上に繋がると当社では考えます。