事例集/技術解説 - DX

身近な業務からDX。ドキュメント作成自動化で、効率化と品質アップを実現 【株式会社 大塚商会】

導入に至った経緯

システムインテグレーターの大塚商会では、お客様のご要望に合わせて設定したファイアウォールやルーター、LANスイッチ、無線アクセスポイントなど様々なネットワーク機器を納品・設置し、お客様のネットワーク環境構築をサポートしています。またこれらのネットワーク機器を設定した際にはエンジニアが設定値を記載したドキュメント(パラメータシート)を作成し、お客様に提出しています。お客様はこのパラメータシートを自社環境の把握・保守や更改検討時の参考資料として活用頂いています。

パラメータシート作成の課題と自動化プログラムの開発

エンジニアが負担を感じている画像
エンジニアの負担

当初は、実際に設定した機器をエンジニアが確認しながら設定値をパラメータシートに書き写して作成していました。しかし、近年はネットワーク機器の多機能化や設定内容の複雑化が進みパラメータシートの記載量が増加、作成作業がエンジニアの大きな負担となるとともに、記載間違いなど品質低下も懸念されていました。

これらの課題を解決するために、パラメータシート作成を自動化するプログラムの開発に取り組むことにしました。設定のバックアップデータをプログラムで解析、パラメータシートの形に成形し出力するもので、プログラム開発は社内のネットワーク機器に精通したエンジニアとプログラム開発スキルを持ったエンジニアでチームを組み実施しました。まずは、機能や設定内容が比較的単純な機種から取り組み、ノウハウを取得。その後に多機能でかつ納品機会の多い機種に順次対応していき、利用できる範囲を広げていきました。

自動化の効果とさらなる価値の創出

パラメータシートの一部、表紙や目次、ファイアウォールのページ。サービスオブジェクト、アドレスオブジェクト、バーチャルIPの項目が並ぶ
自動化されたパラメータシート

このパラメータシート作成を自動化するプログラムでは、今まで1時間以上かかったパラメータシート作成がわずか数分程度で作成でき、さらにエンジニアが書き写すより正確に間違いなく作成できるため、今では多くのエンジニアに活用されています。このプログラムの利用による効率化効果の試算では、月間で社内合計600時間の作業時間削減につながっています。

またこのプログラムを応用として、設定のバックアップデータからソフトウェアバージョンや設定値で条件抽出し、既知のセキュリティ脆弱性に該当するかや機器やソフトウェアのライフサイクルに関する情報を把握することができると考えています。この情報をもとにお客様の利用環境に沿ったアナウンスやアクションを自動化するなど、この取り組みからさらなる価値を生み出す可能性を検討していきたいと考えています。

本事例は、DXと言うにはやや物足りない内容かもしれません。DX実現のため会社をあげて変革に取り組むことはあるべき姿なのかもしれませんが、身近な業務をIT技術で自動化、効率化、デジタル化することもDX実現に向けた道の一つだと考えます。DXと大きく構えすぎずに、身近な業務のデジタル化に取り組んでみてはいかがでしょうか。